食品の営業許可と営業届出
営業許可?営業届出?
弊社では、食品事業者の皆さまの営業許可や営業届出の申請サポート・管理体制の構築を行っております。
このページでは、営業許可や営業届出の違いや実際にあったトラブルや事件をご紹介します。
結論から言うと、以下の表にまとめられます。営業許可の業種にも関わらず許可を取っていない場合は、無許可営業として、行政処分や刑事罰が課せられることがあります。そうならないようにも、悩まれた方がいましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください!
営業許可 | 営業届出 | |
目的 | 衛生上のリスクが高い事業の衛生管理の担保 | 食品を取り扱う事業者の情報の把握→監視指導の効率化 |
対象の業種 | 調理や加工を行うため、食中毒リスクが高い業種 | 簡単な加工や販売・輸入など、比較的リスクが低い業種 |
管轄保健所への手続き | 事前申請 → 施設検査 → 許可証交付 | 事前届出 |
施設基準 | 共通基準+各業種に定めた基準 | なし ※食品事業者としての安全確保の責務はある |
共通する衛生管理 | HACCPに沿った衛生管理、食品衛生責任者の設置 | |
事業の開始 | 保健所の許可証交付後 | 届出提出後 |
営業許可とは
営業許可は、食中毒リスクが高いと考えられる業種に適用されます。
つまり、健康に重大な影響を及ぼす可能性のある食品や、製造工程が複雑で衛生管理が難しい食品を扱う事業が該当します。以下の業種が代表例です。
- 飲食店:調理された料理を提供する食堂やレストランなど
- 食肉販売業:生肉を加工・販売する事業
- 乳製品製造業:牛乳や乳製品を製造する工場
- 魚介類販売業:鮮魚を扱う魚屋さんなど
- 菓子製造業:ケーキやパンなどを製造する工場や店舗
制度のポイントとしては、以下のようなものがあります。
- 施設基準の遵守:施設の構造や設備に関する基準をクリアしなければなりません。例えば、厨房の広さ、換気設備、手洗い場の数などがあります。
- 事前申請と検査:事業を開始する前に、管轄の保健所に申請し、施設が基準を満たしているかどうかの立ち入り検査を受け、合格しなければなりません。
- 許可証の交付:検査に合格すると、営業許可証が交付され、初めて営業を開始できます。この許可には有効期限があり、更新手続きが必要です。
営業届出制度とは
営業届出は、食中毒リスクが比較的低いと考えられる業種に適用されます。これは、2021年6月1日から制度化されました。以下の業種が代表例です。
- 食品や添加物の輸入業:輸入の手続きのみを行う場合
- 食品の通信販売業:インターネットを通じて商品を販売する場合
- 弁当の仕出し業:調理済みのものを届ける場合
- 農産物の販売業:八百屋さんなど、単に包装されたものを販売するだけの場合
制度のポイントとしては、以下のようなものがあります。
- 事前届出:事業を開始する前に、事業者の氏名、住所、連絡先、取り扱う食品の種類などを、管轄の保健所に届け出なければなりません。
- オンラインでの手続きも可能:厚生労働省の食品衛生申請等システムを利用して、オンラインで届出を行うことができます。
- 施設検査は原則不要:営業許可と異なり、届出に際して施設の立ち入り検査は原則として行われません。
- 許可証の交付なし:届出を完了しても、許可証のような公的な証明書は交付されません。届出すれば事業を開始することができます。
共通する衛生管理体制
営業許可でも、営業届出でも、衛生管理は必須です。特に、事業者の皆さまが悩まれるのは”HACCP”による衛生管理ではないでしょうか。
どんな考え方なのか?どんなことが必要なのか?などの解説は別のコラムで行いますので、そちらをご確認ください。
また、”食品衛生責任者”の設置も共通して必要になります。こちらは、保健所や事業者団体で養成講習会を定期的に開催しています。1日間の講習を受ければ取得できますが、営業を運営するにあたっては、知識の蓄積も必要です。
弊社はこの体制構築についてもサポートしております。小さなことでもお問い合わせくださいませ。
実際に発生しているトラブル・事件
営業許可が必要な業種にも関わらず取得していないと、大変なトラブルや事件につながります。実際に食品事故を起こした事業者を調べたところ無許可営業であった、という事案は列挙にいとまがありません。具体的な事案を2つご紹介します。
●ホテルのチャーシューで食肉製品製造業の無許可営業が発覚
千葉県教育委員会は7月18日、公立学校共済組合が運営する某ホテルが販売したチャーシューに金属片が混入していたため、ホテルが自主回収すると発表した。また、同ホテルが食品衛生法上の許可を得ずに製造及び販売をしていたとして、市保健所は製品の自主回収と、チャーシューの製造販売の中止を指導した。同ホテルでは昨年9月頃よりチャーシューの通信販売を始め、これまでに1万本あまりを販売していた。チャーシューの製造及び販売に必要な許可は「食肉製品製造業許可」となるが、「ハム、ソーセージ、ベーコンその他これらに類するもの」という許可対象にチャーシューが表記されていなかったため、ホテル側はチャーシューに許可は不要と判断していたという。(毎日新聞、2018年7月19日記事を参考に作成)
●無許可営業の飲食店で集団食中毒が発生
津山市の某飲食店で9月26日に食事をした団体客33人のうち0歳代から50歳代の27人が下痢や腹痛、吐き気の症状を訴え、保健所はこの店が原因の食中毒と断定した。重症者はいなかったが、店は無許可で営業しており、保健所は営業中止を指示した。(岡山放送、2020年9月30日記事を参考に作成)
無許可営業の場合、食品衛生法の罰則は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」が設けられています。内容は軽いようにも感じるかもしれませんが、実際には、周りの人からの信用だけでなく、前科がつく事による社会的信用が無くなったり、食中毒を起こせば被害者への治療費や賠償などビジネスの存続に関わります。知りながらにして許可を取らない事業者は話になりませんが、許可が必要であることを知らずして営業してしまうことは防ぎたいところです。
今まで扱ったことのない食材や工程に変える時には、営業許可や営業届出の取得が必要かを必ず確認しましょう。弊社では、月額で何度もお問い合わせ可能な法務サポートも行なっております。ぜひご利用ください。